さまーでいず

 私は北海道生まれ北海道育ち、十勝連峰のお膝元で育った。どこまでも広がる丘を歩き、吹き渡る風に揺られ、道端の木の下で本を広げていた日々も随分と昔の話だけど、それが今の私を作ったことだけは疑いようがない。

 

 今思えば、随分と牧歌的な生活をした子供のころだった。「なにもない田舎」とはよく言うけれど、”なにもない”ことこそが一番貴重でえがたいものなのだと今になって考えさせられる。

 

 北海道の、というかわが地元は本州の自然とはまた違った景観を持っていて、ずうっと続く道路と畑、その裾には開拓時代を偲ばせるような原野が広がる。


 この空の下でファンタジー小説を読んでいたら、夢見がちな少年になってしまうのも半ば仕方ないだろう。街から次の村、山までの道の中にいるようなものなんだから。

 

 夜には満点の星空が広がり、手を伸ばせば掴めそうなくらいに天の川が近づいてくる。当時の私から写真を撮るという頭が抜け落ちていたのが惜しいくらいに素晴らしい空だった。

 

 大学に進学して本州に居を移したが、帰省するたびに北海道の大自然に圧倒される。

 

 確かにそこで過ごした、見慣れた風景のはずだ。それでも、新しい出会いがあるもので。高く伸びた針葉樹の林。どこまでも続くジャガイモ畑。機械音とビル越しの四角い空では味わえない世界が、いつも私を待っている。

 

 真冬にこうして、自室でコーヒーを啜りながら思い出すのだ。私だけの夏の日々を。

 

 ......そんな北海道、道央。一度いかがですか。きっと、損はしないですよ。